28歳ASDが実体験から語る”働く”こと自体のツラさ

大人の発達障害 ASD

はじめに:「普通に働く」ことが、こんなに難しいなんて

28歳、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けて3年。

今でも「働く」ということに、心の底から疲れを感じています。

この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら同じような思いを抱えているかもしれません。

あるいは、家族や職場の同僚に

「どうしてこんな簡単なことができないんだろう」

と疑問を感じている方かもしれません。

今日は、私の実体験をもとに、ASDを持つ人間が「働く」ときに直面する”見えない壁”についてお話しします。

忘れられない失敗体験:指示が理解できなかった日雇いバイト

イベント設営で足を引っ張ってしまった日

半年前、生活費を稼ぐために日雇いのイベント設営の仕事をしたことがあります。

朝、現場に着くと雇い主から次々と指示が飛んできました。

「あそこのパイプを持ってきて、こっちのフレームに取り付けて。終わったら向こうの資材を運んでおいて」

私は必死に聞きました。

しかし、次の瞬間には何を言われたのか頭から消えていました。

「あそこ」ってどこ?

「こっちのフレーム」ってどれ?

「向こうの資材」って何?

周りのスタッフは次々と作業を進めていきます。

私だけが、その場に立ちすくんでいました。

何度も「すみません、もう一度教えてください」と聞きました。

でも、忙しい現場で同じことを何度も聞くのは明らかに迷惑でした。

雇い主の表情が徐々に険しくなっていくのがわかりました。

結局、その日は他のスタッフの足を引っ張り続け、

休憩時間には「もうこのバイト応募しないでね」と言われてしまいました。

荷運びバイトで「違う積み方」をしてしまった

別の日、倉庫での荷運びのアルバイトをしたときのことです。

「荷物をトラックに積んで」という指示を受けました。

シンプルな仕事だと思いました。

私は一生懸命、トラックに荷物を積み込みました。

隙間なく、きれいに、効率よく。

自分なりに完璧だと思いました。

しかし、先輩スタッフがやってきて、私の積み方を見るなり、大きなため息をつきました。

「何やってんの?これじゃ降ろすとき大変じゃん。降ろす順番に積まないと意味ないでしょ」

その瞬間、頭が真っ白になりました。

今にして思えば当たり前すぎることですが、

「荷物を積む」という指示には、「降ろす順番を考慮して積む」という暗黙の了解が含まれていたのです。

でも、私にはそれがわかりませんでした。

結局、積み直しになり、またしても時間を無駄にしてしまいました。

なぜこんなに「働く」がツラいのか?ASDの特性と現実

指示を一度に処理できない:ワーキングメモリの問題

ASDの人の多くは、ワーキングメモリ(作業記憶)に困難を抱えています。

簡単に言えば、

「一度に複数の情報を頭の中で保持して処理する」ことが苦手なのです。

先ほどのイベント設営の例で言えば、

「あそこのパイプ」「こっちのフレーム」「向こうの資材」

という3つの情報を同時に、正確に覚えておくことができませんでした。

健常者なら無意識にできることが、私たちASDにとっては高度な認知作業なのです。

「暗黙の了解」が理解できない:コミュニケーションの壁

荷運びの例では、「降ろす順番を考えて積む」という暗黙のルールが理解できませんでした。

ASDの人は、言葉の文字通りの意味を受け取る傾向があります。

「荷物を積んで」と言われたら、本当に「積む」ことだけを考えてしまうのです。

職場では、こうした「言わなくてもわかるでしょ」が無数に存在します。

  • 「適当にやっといて」→どのくらいが「適当」?
  • 「急いで」→どのくらい急げばいい?
  • 「いい感じに」→「いい感じ」の基準は?

こうした曖昧な指示が、私たちを混乱させ、疲弊させます。

感覚過敏と環境ストレス

多くのASDの人は感覚過敏を抱えています。

  • 職場の蛍光灯の光が眩しすぎる
  • 周囲の話し声や機械音が頭に突き刺さる
  • 人混みや満員電車で気分が悪くなる

「働く」という行為の前に、

職場に行くまでの通勤、職場環境そのものが大きなストレスになります。

健常者が100のエネルギーで仕事をするとき、

私たちは環境に適応するだけで30のエネルギーを消費し、残り70で仕事をしなければならないのです。

マルチタスクの困難

ASDの人の多くは、一度に複数のことを処理することが極めて苦手です。

例えば、電話応対をしながらメモを取る。

接客しながら在庫を確認する。

こうした「ながら作業」が、健常者の何倍も難しく感じます。

職場では「臨機応変に」「状況を見て」が求められますが、

私たちにとってはこれが最も難しいことの一つです。

私が試して効果があった対処法:理解と工夫が鍵

書籍で自分を理解する

まず、自分自身のASDについて深く理解することが重要でした。

私が特に役立ったと感じたのは、ASDの特性や対処法について書かれた書籍です。

楽天ブックスで探せる、おすすめのASD関連書籍:

  • 『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』
  • 『「大人の発達障害」をうまく生き抜く4つの習慣』
  • 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』
  • 『図解 よくわかる大人の発達障害』

これらの書籍では、ASDの特性を活かした働き方や、具体的な対処法が紹介されています。

特に印象に残ったのは、

「自分の苦手を無理に克服しようとするのではなく、得意を活かす方向で考える」

というメッセージです。

本を読むことで、

「自分はダメな人間なんだ」という思い込みから、「自分には独特の処理方法があるだけなんだ」

という理解に変わりました。

視覚化とメモの徹底

口頭での指示が苦手な私は、徹底的にメモを取るようにしました。

さらに、可能な限り指示を視覚化してもらうようお願いしました。

  • 図や写真で完成形を見せてもらう
  • 作業手順を箇条書きにしてもらう
  • チェックリストを作成する

言葉だけの説明より、目で見える情報の方が圧倒的に理解しやすいのです。

環境調整:感覚過敏への対策

感覚過敏への対策として、以下のような工夫をしました:

ノイズキャンセリングイヤホンの活用

集中作業時には、ノイズキャンセリングイヤホンで周囲の音を遮断しました。(楽天市場で様々な価格帯のものが購入できます)

サングラスや調光メガネ

蛍光灯の光が苦手な場合、室内でも使えるサングラスや調光メガネが効果的です。

タイマーの活用

時間感覚が掴みにくいため、タイマーを使って作業時間を区切りました。(楽天市場でキッチンタイマーやスマートウォッチが手に入ります)

シングルタスクを徹底する

マルチタスクが苦手なら、徹底的にシングルタスクで仕事をする環境を選びました。

具体的には:

  • 一つの作業が終わってから次に移る
  • 作業を中断されないよう、集中時間を確保してもらう
  • 優先順位を明確にしてもらう

完璧主義をやめて、「一つずつ、確実に」を心がけるようになりました。

周囲の理解を得るために:伝え方のコツ

カミングアウトは慎重に、でも必要なら勇気を持って

ASDであることを職場に伝えるかどうかは、非常に難しい判断です。

私の経験では、

信頼できる上司や人事担当者に、少しずつ自分の特性を伝えることが効果的でした。

ポイントは、「できないこと」だけでなく、「こうすればできること」を一緒に伝えることです。

例:「口頭での指示は忘れてしまうことがありますが、メモや図で示していただければ正確に作業できます」

「配慮」ではなく「環境調整」という考え方

「配慮してください」というと、どうしても「特別扱い」のニュアンスが出てしまいます。

そうではなく、「この環境調整があれば、より効率的に働けます」という提案型のコミュニケーションを心がけました。

これは企業側にとってもメリットのある話なのです。

家族や友人にも理解してもらう

職場だけでなく、家族や友人にもASDの特性を理解してもらうことは重要です。

「怠けている」「やる気がない」と誤解されることが多いASDですが、

実際には人一倍エネルギーを使っています。

おすすめの伝え方は、一緒に書籍を読んでもらうことです。

楽天ブックスには、家族向けのASD理解本もたくさんあります。

第三者(専門家)の言葉の方が、当事者の説明より受け入れられやすいこともあります。

働き続けるための心構え:完璧を求めない

「普通」になろうとしない

長い間、私は「普通の人」になろうと必死でした。

でも、それは間違いでした。

ASDは病気ではなく、脳の特性です。治すものではなく、付き合っていくものです。

「普通」の基準に自分を無理やり合わせようとすると、必ず疲弊します。

自分に合った仕事を見つける

すべての仕事がASDの人に向いていないわけではありません。

私の場合、以下のような仕事が比較的やりやすいと感じました:

  • ルーチンワークが中心の仕事
  • 一人で集中できる環境の仕事
  • 明確な指示やマニュアルがある仕事
  • 視覚的な作業(デザイン、プログラミングなど)

逆に、臨機応変な対応が求められる接客業や、マルチタスクが必須の仕事は、私には合いませんでした。

休むことも「働く」ための重要なスキル

ASDの人は、環境からの刺激を処理するだけで、健常者の何倍ものエネルギーを使います。

だからこそ、意識的に休息を取ることが必要です。

  • 定期的な休憩
  • 感覚刺激の少ない環境での休息
  • 趣味やリラックス時間の確保

「休むこと」に罪悪感を持つ必要はありません。それは次に働くためのエネルギー充電なのです。

まとめ:あなたは一人じゃない

28歳の今でも、「働く」ことは簡単ではありません。

イベント設営で指示が理解できず、荷運びで違う積み方をしてしまった失敗は、今でも心に残っています。

でも、それらの失敗があったからこそ、自分の特性を理解し、対処法を学び、少しずつ働きやすい環境を見つけられるようになりました。

大切なのは:

  • 自分の特性を理解すること(書籍などでの学びが有効)
  • 環境調整と工夫をすること
  • 周囲に適切に伝えること
  • 完璧を求めないこと

もしあなたが今、働くことに苦しんでいるなら、それはあなたが「ダメ」なのではありません。

今の環境が、あなたの特性に合っていないだけかもしれません。

もしあなたの家族や同僚が、仕事で困っているように見えるなら、それは

「やる気がない」のではなく、見えない壁と戦っている

のかもしれません。

ASDについての理解を深め、お互いに歩み寄ることができれば、きっと状況は変わります。

楽天ブックスで関連書籍を探してみる、

医療機関や支援機関に相談してみる。

小さな一歩から始めてみませんか?

働くことは、確かにツラい。でも、あなたは一人じゃない。

この記事が、少しでもあなたの助けになれば幸いです。

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